たった一本でも 高山植物が咲き乱れている山のお花畑で、一人の登山者が、登山の記念にしようと思って、一本の花を摘んで、山を降りました。それを押し花にして、時々取り出しては、お花畑の美しい景色を懐かしく思い出していました。 ところが、一本の花を登山の記念に摘んできた山のお花畑は、今はもうなくなりました。 ふと、その美しさやかれんな姿に心を奪われ、何気なく花を摘んだ人は、一人ではなかったのです。たくさんの人が、一本の花をお花畑からそっと抜き取って行ったのでした。 それは一人たった一本でした。けれども、百人で百本、千人で千本、......になるのです。 夏の海水浴場の広い砂浜に、強い日差しを受けて、きらりと光るものがありました。それは、何気なく捨てたジュースの瓶のかけらでした。 やがて、海水浴場の砂浜は、どこへ行っても危険なガラスのかけらやごみが、散らばっているようになりました。地元の人たちが、せっせと取り除き、清掃を続けているのに、ガラスやごみは増えるばかりです。 そして、何気なく瓶を捨てた人自身が、今では自分の捨てた瓶のかけらにびくびくしながら、海水浴をしなければならないくなりました。 この二つの話からどんなことを感じましたか。皆さんはきっと、「こんな人たちに美しい自然が台無しにされて堪るものか。」と思うでしょう。 一本の花を摘み取ったり、ジュースの瓶を割って捨てるということが、積もり積もると、どうなるでしょうか。山のお花畑や海岸の砂浜は、いったいだれのものでしょうか。