（二）喫茶店に向かう私の本能 喫茶店で仕事をするのが好きだ。家だとついだらだらしてしまうので、外で仕事をしている。手の作業が多いのでパソコンを持ち歩く必要もない。ノートと原稿を持って喫茶店に行く。 喫茶店に行くと、隣の人の会話を聞いてしまって集中できないのではないか、と開かれることがある。考えてみると、確かに周りの声を聞いたり、何を食ベているかちらりと見たりしている。けれど、そのほうが ( A ) 集中できるのだ。 仕事部屋を借りたこともあるのだが、しんとした音のない部屋に、机とパソコンがあるだけの空間に耐えられなかった。小説を書くために整った部屋に閉じ込められている。そのことが奇妙に苦しくて、仕事部屋のあるマンションの前の道を通ることすらできなくなってしまった。人の気配が恋しくて、結局喫茶店で小説を書いていた。 隣で知らない人たちがコーヒーを飲んだり会話をしたりしていると安心するし、集中できる。たぶん、自分の脳だけしか動いていない世界が嫌なのだと思う。他の人の脳が周りで作動しているとほっとする。自分と同じだけれど違う生きものが蠢いている。そういう空間のほうが安心するのは、私の動物としての本能なのではないかと思う。 今日も、原稿を持って喫茶店に向かう。仕事部屋だったマンションの前を通ると少しだけ懐かしい。私がいた部屋に、今は違う誰かの気配がする。 2 .筆者はどんな場所で仕事をすると集中できると言っていますか。